2024/03/08 11:27

こんにちは、及富の菊地です。
3月になって、春が近づいたかなと思いきや、かえって寒さが舞い戻ってきてしまいました。
日ごろ日本国内だけではなく世界各国のお客様から御注文をいただいております。
どんな国からご注文をいただくかと言いますと、最近は北欧からのご注文が増えていますのでやはり寒い場所、寒い季節と鉄瓶というのは親和性が高いのかもしれないなと思う今日この頃です。

さて、今日は日頃お世話になっている輸出向けの配送業者さんより連絡をいただきまして、税関で荷物が止まっているとのこと。国はハンガリー宛てです。どうしたんだろう?と聞いてみますと
「ロシア産の鉄を原材料に使用していない証明」が必要とのこと。
調べてみますと、現在EU圏にはロシア産の資材を使用した製品の輸入規制がかかっているんですね。

私たちが、日ごろ使用している鉄の材料は、鉄鉱石を由来とする材料を使用しています。日本の鉄鋼製品は海外からの鉄鉱石の輸入により成り立っています。鉄鉱石と一口に申しましても、材料の成分はその国、その地域、その山によっても異なり、品質に大きく影響します。南部鉄器は生産事業者が共同で材料を仕入れしている側面もありますから、材料の吟味も鋳物の産地としての仕事です。
鉄鉱石は現在、カナダ、ブラジル、オーストラリアなどから輸入され、鉄鉱石は日本国内の製鉄会社で溶解され、「銑鉄」という材料になります。そして、その銑鉄は私たち南部鉄器の産地へと運ばれてくるのです。

そのため、今回ハンガリーの税関から確認されているロシア産鋼材使用ということには該当しないため、税関宛てにその書類を準備しまして送付したところで、この記事を書いているところです。今回に限らず、国ごとによって輸出、輸入には事細かなルールがあるため、お送りする度にドキドキしながらも、無事お手元に届いてお客さんに喜んでいただけるととてもありがたくホッとします。


(上:弊社で使用している銑鉄)

日本における鉄鋳物の歴史をたどっていきますと、砂鉄が主な材料になっていたとされています。900年ほど前にはすでにここ岩手県奥州市では鉄鋳物が盛んにおこなわれていたそうです。(そのころには南部鉄器という言葉はまだ生まれていません。南部鉄器は現在の盛岡市、旧「南部」藩の「南部」に由来するためです。)
900年前当時の鋳物技術にはたたら製鉄という言葉がキーワードになってきます。スタジオジブリの作品で有名な「もののけ姫」において、主人公のアシタカが訪れた山間部の製鉄場がまさに「たたら製鉄」をしている場所ですね。
砂鉄と木炭を使用し、鋳物や、鍛造に使うための母材を作るわけです。
この砂鉄を使った母材のことを「砂鉄銑」「和銑」と呼ばれ、後に鉄鉱石を使用した母材のことを「洋銑」と言って区別されます。

日本において鉄鉱石由来の製鉄技術が研究、確立されるまでは、砂鉄材料がメインの材料であったことが知られています。